受託者が辞任、または解任をした場合
家族信託の契約を行うにあたり、委託者にとって受託者を誰にお願いするかを決めるのは非常に重要なことです。ほとんどの場合は信託財産を委託する立場の委託者が慎重に検討し、決定がされます。しかし納得して選任したとしても、財産の管理を行ううちに委託者本人が解任したいと思う理由が出来たり、反対に受託者が辞任を希望したりするケースもあります。
こちらのページでは受託者の辞任、解任をした場合についてご説明いたします。
受託者が辞任を申し出た場合
家族信託において、受託者は重要な役割を担う必要不可欠な存在のため、自身が辞任したいと思っても勝手に辞任することはできません。
もし信託契約の中に、「受託者本人からの辞任の申し入れ」について記載がある場合には、それに基づき対応を行うことになります。しかしそのような取り決めが特にない場合で辞任をするには委託者と受益者の同意を得る必要があります。家族信託の運用において不利益が生じないよう受託者の意思のみでは辞任が認められないようになっているのです。ただし例外として、受託者が信託財産の管理・運営等を行うにあたり難しい状況になってしまった(認知症等)場合においては、裁判所で「やむをえない事情があることを証明」することにより、受託者の辞任が許されます。
受託者を解任したい場合
上記の受託者の辞任とは反対に、何かしらの理由により受託者の解任を希望する場合には委託者と受益者の双方が合意すれば可能です。ただし、受託者の不適切な行為によって信託財産に損害が生じた場合には、委託者又は、受益者のどちらかが裁判所に申し出ることによって、受託者の解任が行えます。
なお受託者の辞任・解任後、受託者不在の状態になってから、1年以内には新たな受託者を選任する必要があります。一般的には委託者と受益者が話し合い新たな受託者を選任することになりますが、状況によっては裁判所に選任をお願いする方法もあります。なお新たな受託者を選任する時に委託者が不在の場合には、受益者単独で選任することが可能です。注意が必要なのは受託者が不在になってから1年以内に新たな受託者を決定しないと、信託契約自体が終了となりますので、期限を過ぎてしまわないよう気を付けてください。