認知症対策としての家族信託
高齢化社会の現代において、認知症は決して他人事ではありません。認知症を患い適切な判断が難しくなると、新たに契約することが出来ないケースが多くあります。このようなケースで有効となるのが家族信託です。家族信託の特徴として、利便性・柔軟性があります。家族信託を上手に活用することで、認知症対策をすることが可能になりますので、こちらの説明で確認をしておきましょう。
認知症対策として「成年後見」と「家族信託」を比較
まずは、認知症対策としてよく使われる「成年後見制度」と「家族信託」を比べてみましょう。
成年後見制度
認知症を発症してからでも、本人の状態がどの程度かを医師に診断してもらい、家庭裁判所に申立をすることが可能
家族信託
家族信託の契約は、認知症になってからでは結ぶことはできません。家族信託を利用した認知症対策をしたいとお考えの場合は、本人の判断能力がしっかりしているうちに契約を結びましょう。本人の判断能力が十分でないとみなされてしまうと、不動産の売却や定期預金の解約などと同じく契約行為が出来なくなります。
制約
成年後見制度における財産管理には、家庭裁判所等による制約が課せられます。これに対し、家族信託には公的な監督機関はなく、あくまで家族間の信頼が基礎になります。ですから、相続税対策を踏まえた柔軟な財産管理や本人の希望に沿った資産活用が可能となります。
費用
成年後見制度を利用する場合、本人の保有資産が一定額以上あると後見監督人をつける必要があり、その報酬額は後見監督人に毎月1~2万円程度になります。またケースによっては、専門職後見人(司法書士や弁護士、社会福祉士等の専門家が後見人になること)と後見監督人の二つの報酬を支払うことになる場合があります。制度利用の開始から、本人が死亡するまで発生し続けますので、費用はその期間によります。
これに対して、家族信託では、契約締結や書類作成等など法律の専門家へ依頼することがほとんどですのでこれらの報酬が信託開始前にかかります。しかし、家族信託は受託者に報酬を設定した場合を除き、ランニングコストはかかりません。
期間
成年後見制度は、本人の判断能力低下後から始まり、本人の死亡までの一代限りの期間に限定されます。
これに対し、家族信託は本人の判断能力がある状態の時に信託契約を交わし即時にスタートさせ、契約内容によっては自分の死亡後の数世代先までの長期にわたり財産管理を託すことができます。この点が成年後見との大きな違いです。